つけるだけでやせる

昔から「〜するだけでOK」式の商品に接するたびに「ケッ」と思っていた。特にダイエット関連でそうした製品が多い気がするが、「太るのは摂取したエネルギーに対して消費するエネルギーが少ないから。運動して摂取した以上のエネルギーを消費すればそれで解決するのに。運動は身体も鍛えられるし一石二鳥だ」と。つまり痩せるのに必要なのはひたすら汗を流すことであって、「これだけやれば」とか「これだけ飲めば」などという怪しげなものに飛びつくのは阿呆のすることだと、半ば軽蔑の目を向けていたのである。

今でも基本的にはその通りだとは思う。しかし、一方でそうしたものが気になって仕方がない心境もわかるようになってきた。

本当に何もせず、ソファに寝そべってポテチを食べながら「痩せたーい」と呟いているような人は別として、体重や体脂肪が気になる人は、自分なりには何かに取り組むのである。間食をやめてみるとか、会社でエレベーターを使わずに常に階段を利用するとか、週に一度泳ぎに行くとか。知らないけど。

その結果、たとえば一週間チョコレートとポテチをやめたら1kg痩せたとか、2週間バスを使わず歩いたら1.5kg痩せたとかの成果が出れば、俄然やる気になって、あと一週間、あと1kgと続ける気も起きようが、残念ながらそこまで簡単に成果は出ない。3ヶ月、半年と地道に努力を続けてはじめて結果がついてくるものだろう。

でも、一週間、二週間と続けても何も変わらないと、イヤになってくるのである。ここが我慢のしどころと一ヶ月継続しても変化が見られないと、心が折れそうになるのである。そんな時に「〜するだけ」という宣伝文句を見ると、ついつい心が動いてしまうのだ。

実は今日、神戸駅前の書店に「つけるだけ 歩くだけでやせる魔法のパッド」なるものが売られていて、「つけて歩くだけで半年で20kgやせた!」という体験談に釣られてつい買ってしまったのだ。

これは足に着ける一種のサポーターで、これによってウォーキングの効果が増すらしい。今僕は、筋トレやら縄跳びやらいろいろ手を出しているとはいえ、基本的には毎日歩くことを一番意識しているため、相性はいいように思われた。

購入後にくだんの体験談を読んでみたところ、その人はこの製品の担当者の一人で、モニターをしていたのだが、体重100kgあったのが、半年で20kgやせ、ウエストは25cm減り、体脂肪率は16%減ったという。ところがなお読んでみると、職場から家まで15kmを毎日歩いて帰るようにしたとのこと。毎日15km歩けば、このサポーターを着けようが着けなかろうが、そりゃ痩せるでしょ! と笑ってしまった。やはり世の中にはうまい話はないらしい。

実際に使っている人がいたら、ぜひ話を聞いてみたいものである。